最初に申し上げておきます。これは「ライブ・レポート」ではありません。
というのも、私はポール・マッカートニーにも、ウイングスにも、ビートルズにも詳しくないからです。
率直に言って、レポートできる程の知識も情報量も乏しく、セットリストもありませんので何卒ご容赦くださいませ。
ということで、今回はポール・マッカートニーのライブを初めて観た記念として、東京ドーム / 2013.11.21(木)最終公演で自分が感じた事を書き残しておきたいと思います。



そもそもの始まりは、嫁に行った次女からの突然のメールでした。
来週辺りにまた孫たちを連れて遊びにくる連絡かと思いきや、メールのタイトルを見て驚いた。
「ビートルズの人の東京公演!」←ビートルズの人って・・・と、笑いながら本文を見たら、これまた一言。
「お母さん、行くでしょ!」・・・うっ。
この一文が私には何故か、流行り言葉の「今でしょ!」と言われたみたいな感覚になった。そしてそのまま流されるように「うん」と返事したら、「やっぱりネ。じゃチケット取るの手伝うよ〜♪」と、トントン拍子で決まったのでした。
チケットが取れたのは、11月21日(木曜日)の東京ドーム最終日。1階3塁側のスタンド席。
中々良い席だなと思った。

私は70年代から洋楽を聴くようになりました。
当然、その時代にはビートルズは解散していて、当時の自分には、ビートルズはもう古い!というか、既に偉業を成し遂げた過去のバンドという感覚を持っていました。
またその頃、家に1枚だけビートルズのレコード(LP)がありましたが、( 1962-1966のヒット曲集、赤盤といわれてるレコードです。) そのレコードは、何故かプログレ好きの姉の部屋にあって、クリムゾンやフロイドのレコードに挟まれていて、 ちょっと場違い?のような感じを受けつつも、何度かレコード針を落として聴いていましたが、刺激が感じられなかったというか、 良い曲だなとは思ったけど、それ以上でもそれ以下にもならなかったのが正直なところです。

それと、その頃、学校(中学)では男子がバンドを組んで、自慢げに文化祭で演奏するのは決まってビートルズナンバーであり、 校内放送で洋楽を流すことに先生が許可するのもビートルズの曲でした。 そんな特別扱いのビートルズに対して、当時、自分の大好きなロックバンドがまだ知る人ぞ知る状況だっただけに、嫉妬心からくる反感を持っていったのも事実です。

時は過ぎて、本当にビートルズの曲を好むようになったのは、大人になってからでした。
80年代にジョン・レノンのアルバムも買ったりするようになりましたが、好みの曲のクレジットを調べると、ほとんどがポール作でした。でも相変わらず知識は乏しいまま。 その後もずっとタイトルは知らなくても、曲を楽しめればそれで満足♪というスタンスは変わらずに過ごしてきて、それで迎えたのが、2013年11月21日だったわけです。

ポール・マッカートニー東京公演 最終日!
おそらく、ビートルズマニアとかファンの方たちは、いろんな想いを抱いて会場に向かっていたと想像しますが、 私の場合は前記したように、想いは薄いワケで、何かしらを期待するにも情報は乏しく、久しぶりのドームを楽しみたいという、申し訳ないくらい実に軽い気持ちで臨みました。
あ、でも一つだけ!カラオケでもよく歌う大好きな曲、『I've Just Seen a Face』を演奏してくれたら最高だな〜♪という思いは秘めてました。

さて、ドームに着くと、予想以上の凄い人・人・人!!グッズ売り場も会場に入るのにも凄い長蛇の列!!
それを目の当りにして初めてポールの凄さを少しずつ感じていました。
混雑する中、やっとゲート番号を見つけても、今度はそのゲートに並ぶ列の最後尾に向かうためにゲート番号からどんどん離れていくという状況の中、 トイレだけは先に済ませておいて正解でした。
で、やっとゲート先頭に立ち、回転ドアに入ったときのこと・・・。
入口スタッフから、「バーを押して進んでくださ〜い!・・・バーを押して!・・押して!」と再三言われてそこで初めてバーを押さないと進まない事に気が付き、入れました。(笑)

入った瞬間に気圧が変わったのを確認したと同時に、スタッフから、サイリウムを渡された。
「ネタバレですみませんがアンコールの『Yesterday』の時に振ってください」と、ポールへのサプライズらしい。
そのサイリウムの使い方は、同封の紙をご覧くださいと言われたが、字が小さくて見辛かった。
遠くは見えるが近くは見えにくいお年頃には、チケットの通路番号の確認さえも手こずった

なんとか、席を見つけて座ったのが開演15分前。
座ってから、ステージと共に会場全体をゆっくり見渡した。スタンドの両端の席さえも全て人で埋まっていた。
それを目の当りにして今度は、ポールの凄さを肌で、全身で感じていました。

会場が暗くなると同時に、凄い歓声が上がり、ステージにポールが出てきたのと同時に、私も周りの人たちも全員立ち上がった。
タイトルは知らないけど過去に何度も聴いた曲が続く。
リズムに合わせて手拍子をしながら踊る。
ポールと一緒に歌う。もちろんそれはサビの部分だけだけど、それでも凄く楽しい♪ 楽しすぎて何度か隣の人や前の人に腕が当たったりした。でも、リズムに合わせて踊るのはやめられなかった。

ポールがMCを日本語で頑張ってくれる。途中からはそれがスクリーンに字幕で出してくれる。なんて親切な人なんだろう!
時折、お茶目な動作を見せてくれる。なんてチャーミングな人なんだろう!
そして大いに感激したのは、『I've Just Seen a Face』が始まった時。まさかライブで聞けるなんて!しかも声もキーもレコードのまんま聞こえた。 71歳とは思えない!演出もステージから天井に映し出されるレーザービームは綺麗で見惚れたし、爆発音はスタンド席にいても耳がキーンとなるほど迫力があった。

そして、ふと気が付いた。スタンド席にいても音がとても綺麗に聞こえてくることに。
反響音はまったく無かった。そしたらポールが、「こんな会場でライブ演奏ができるのは、たくさんのスタッフが良い仕事をしてくれるからなんだ」みたいなことを話していた。 そういう感謝の言葉をステージ上で伝えるってところに、ポールの人柄を垣間見た気がした。

ライヴ中盤、踊りすぎて背中にも汗が流れ落ちていることに気が付く。
もっと冷房を効かせて〜!と何度か思った。でもステージ上のポールはもっと汗をかいてる。しかも私より20年も先輩の人なのだ。 そう思ったら、ポールの食生活とか日常の運動って、いったいどんな事をやってるんだろう?と知りたくなった。
だけどステージ上のポールを見ている内に、その答えなんて、何でもよくなった。

ステージ両端のスクリーンに映し出されるポールのいろんな表情を観ていたら、この人は今とても幸せで、満ち足りているような気がしたからだ。 淡々としていながら熱く歌い、余計な力は入れずに達人のように次々とギターやベースやピアノを演奏している。 いろんなプレッシャーなどは、まるで柳のようにフワッと受け流して、広く豊かな心でゆったり構えているような、そんな余裕と自信に溢れているのが伝わってきた。
そして、そう思えば思うほど、ポールって本当に凄い人なんだ!私は今、その凄い人のライブを観ているんだ!という実感が湧いてきて、 その途端、私は自分に言い聞かせた。「スクリーン越しに観てたら勿体ない!例え小さくしか見えなくても、あのステージに立っている生のポールを観ていよう!」と。


ライブ終盤、周りの人たちがゴソゴソと、会場入口で配られたあのサイリウムを取り出し始めた。私も準備する。
『Yesterday』の演奏が始まった。
っと、その時、私の視線はステージではなく、会場の方に釘付けになった。
凄〜〜いっっ!!!
凄すぎる!!!
超満員の客席から一斉に振られる赤いサイリウム。こんな光景、生まれて初めて観た!!!
まさに圧巻!そしてすごく綺麗だ!!
そんな光景とステージを交互に見ながら私は思わず「ポール!ちゃんと全部見えてる?」などど思ったりした。
これはポールへのサプライズだったけど、自分にもサプライズになった。 きっと一生忘れられないだろう。



メンバー全員がステージ前面に出てきてご挨拶。
バンドメンバーの名前はパンフレットを見ないと分からないのが申し訳ないけれど、 特に印象に残ったのは、写真左から2番目のキーボードを担当していた人で、時折タンバリンも叩いてたけど、 それさえもハンパない集中力で演奏していた姿が記憶に残った。

最後の最後にポールが「またね」と日本語で言って、凄い紙吹雪が舞う中を笑顔で走り去っていきました。
私は、その凄い紙吹雪をしばらく、ボーッと見つめていました。



これまで、いろんなアーティストのライブを観てきましたが、その中でも経験した事がないほどの充足感がありました。 私にとっては、初めてポールの偉大さを体感できた日であり、ポールにはもちろんの事、この日のこと全てに感謝したくなるほど、幸せで満ち足りた気分になりました。
ありがとう!の五文字では言い足りなくて、もどかしくなるくらいに・・・。



Notes : November 28th, 2013.